ファインダビリティ(見つけやすさ)の時代

by Peter Morvilles, 2002年4月29日
翻訳:Izumi Oku, 2003年6月2日

バルティモアで行なわれる第3回 IAサミットに参加するため、米国でも最先端の空港であるデトロイト・メトロポリタン空港を初めて訪れることになりました。

寒い3月の朝、空港に近づくにつれ、気持ちが高揚していたのでしょう。なにしろ、将来のためにと12億ドルもつぎ込まれたノースウエスト・ワールド・ゲートウェイです。ノースウエスト航空によると、世界でも最高の旅行経験が出来るということでした。

とくにかく、私は実際は心配でしかたがなかったのです。私はフライトの時間に遅れて到着していて、トイレとコーヒー(しかも絶対にこの順番)が必要だったのです。新しい空港で見つけることはさほど難しいことではないはずでした。

「今まで一度に建設されたなかで、一番広いワンフロア構成の駐車場」で、長期利用向け駐車場を探し、3周回ったところで、自分で探すのをあきらめて警備員にたずねてみました。警備員は、「インターナショナルパーキング」の表示をたどっていけば、長期利用向け駐車場に着くと教えてくれました。なるほどね!

その後何度かダンテの神曲を堪能した後、やっと空港のセキュリティでのフルボディチェックから開放され、豪華なコンコースAの中心に入ると、空高くアーチ形の天井が目に飛び込んできました。高級なショップがホールに軒を連ねていました。そして、目の前には、炎でライトアップされた黒い御影石でつくられた楕円の噴水があり、水の流れが美しく照らしだされいて、世界への旅の玄関の象徴となっていました。

しかしながら残念にも、200万平方メートルの敷地内にある475個の公衆トイレの表示は見つけることができませんでした。話すと長くなるのでこの苦労話を短くすると、結局コーヒーを飲めたのは、高度3万フィートに差しかかったときでした。

この苦労の告発を

ヤコブ・ニールセンであれば、きっとこの空港がユーザービリティの問題を抱えていると言い、ヒューリスティク評価を行い、ユーザーテストを実施して大きな問題を解決する事でしょう。これがユーザビリティの優れたところで、いろんなことに応用が出来ます。ウェブサイト、ソフトウェア、カメラ、釣竿、そして空港。素晴らしいことです。

ルイス・ローゼンフェルドであれば、この空港は情報アーキテクチャに問題があると言うでしょう。いや、言わない可能性もあります。なぜなら地図やディスプレイサインは情報アーキテクチャの専門ですが、少し範囲をひろげて空港ターミナルの構造デザインに不満を持った旅行者のフィードバックも含めるのは拡大解釈になるかもしれないからです。いずれにしても情報アーキテクチャには範囲があります。残念ながら、情報アーキテクチャはヤコブ・ニールセンのユーザビリティほど柔軟ではありません。

このような場合、私はこの空港にはファインダビリティの問題があるという表現をするようにしています。私が経験した問題とは、目的のものを見つけられなかったことにあります。ユーザビリティのように、ファインダビリティは、物理的な環境とバーチャルの環境の両方に深く関係があります。また、さらに大切のは、これが1つの言葉で表現できることです。

過去の(おかしな)自己確立

アーガス・アソシエイツ社で、「情報アーキテクチャ」を専門としたコンサルティング会社を始め、この話題を説明し探究するためにを書きました。

過去に、わが社で"コンテンツIA"を実践していることで(おかしな)非難をされてきましたが、このレッテルをとても邪魔に思っています。

確かに私たちアルゴ号の乗組員(※)は、IAの専門分野に図書館学の考え方を持ち込み強みとしたのは事実です。また、オンラインアプリケーションのタスク・デザインやプロセス・フローよりも、大量のコンテンツを抱えるサイトをどのように整理していくかに注力していました。

しかし、この点に焦点を絞ったことはコンテンツだけに注目するのではなく、システムのデザインをすることこそが、ユーザーが欲しい情報を見つけることに役立つことだと分かっていたからです。

あいにく、1990年代の顧客は「ファインダビリティ」を買おうというクライアントがほとんどいなかったので、私たちはあまりこの思いを外には公表しませんでした。

最初、クライアントは見た目とテクノロジーに注目していました。初期のころの豪華なパンフレットのようなウェブサイトと異常に凝ったJavaアプリケーションを覚えていますか?その後、クライアントも学び、ユーザビリティや拡張性、管理性が要求されるようになりました。クライアントも少し大変な思いをしたようですが、それほどでもないでしょう。

会社を大きくするために、クライアントのニーズや要望との絶妙なバランスを取りながら「情報アーキテクチャ」のサービスを提供してきました。私たちは、最初から深い信念を持っており、長期的に挑戦をし続けてきました。また、その努力が、他の方にも理解されることにつながると思っていました。

なので、アーガス・ブランドの情報アーキテクチャに名前をつけるとしたら、アーガスIAでも、コンテンツIAでも、白くまIAでもなく、密かにファインダビリティIAと呼んでいただきたいと願っているのです!

※)訳注 ... アーガス(Argus)はギリシアのイオルコスの王子イアーソンとその仲間が、金の羊毛(Golden Fleece)を探しに行った船「アルゴ号」の名でもある。アルゴ号乗組員(Argonaut)とはアーガス社の社員をその遠征の旅に出た乗組員に比喩したたとえ。

ボクシス・オーバー・アローズ

私は今まで常に情報アーキテクチャの正統な定義することを避けてきました。新しい分野で、時期尚早にそのアイデンティティを決定し箱にしまう事(いや、棺と言うべきか)それだけは行いたくなかったからです。

今、情報アーキテクチャは新たに成熟していく段階へと進んでいます。IAの役割や責任範囲がしっかりしたものになって来ており、IAコミュニティも形成されつつあります。関係者の間では、些細な違いから狭義の意味まで、情報アーキテクチャの定義がさんざん議論されていて、すでに議論されつくした感じもします。しかしもう後戻りはできません。

ある意味では、これはとても素晴らしいことです。当時、行き先も見えていなかった1990年初めに一緒に活動した我々仲間にとっては、当時描いていたビジョンがあながち間違っていなかった証拠になるからです。

しかし、同時に怖くもあります。成熟していくということは型にはまっていくことになるからです。私たちは自ら作った箱にとらわれていることを認識していました。その上で、関連する分野や新しいチャレンジを繋ぐ幾つもの矢はとても魅力的でした。

結局のところ、コンテンツマネージメントやナレッジマネジメント、ソーシャル・コンピューティング、経済支援も全て大きな意味で情報アーキテクチャの傘下にある要素であるという議論は、容易に納得させられるものではないのです。IAの領域もそこまで大規模ではありません。

それでも我々インフォメーションアーキテクトは、このような話題に夢中になり、自分の箱から離れ、矢を追いかけているのです。

私にとってファインダビリティとはこのような自由を与えてくれるものなのです。情報アーキテクチャの代わりになるものではないですし、流派でも情報アーキテクチャのブランドでもありません。ファインダビリティは、私たちが普段、多次的な世界で生活していることを再認識させ、従来の枠を越えて新しい一面から探るきっかけをもたらしてくれるものなのです。

The Many Facets of Findability

ファインダビリティは内容に限定もありません。ましてウェブに限定されるものでもありません。ファインダビリティとは、人々が欲しい情報を見つけるのに役立つシステムをデザインすることなのです。

ファインダビリティの時代

ユーザーエクスペリエンスデザインという小さな世界においても、ファインダビリティはあまり注目されていません。インタラクションデザインのほうがより魅力的ですし、ユーザービリティはもっと明快だからでしょう。

しかし今後は、ファインダビリティは最終的にはウェブサイト、イントラネット、ナレッジマネジメントシステムやオンラインコミュニティを開発していく上での中心課題として定義されることになるでしょう。

どうしてか?それはシステムの重要なポイントは、規模が大きくなるにつれ、ファインダビリティにとてもに負荷がかかることになるからです。ルイス・ローゼンフェルドも以下のように断定しています。「...この発展は、ユーザービリティとインタラクションデザインの課題には特に影響しないだろう...(しかし)情報アーキテクチャの課題は、よりいっそうハードルの高いものになっていくでしょう。」

この大胆な発言をサポートする十分な証拠があります。企業がファインダビリティを作り出すことに失敗しているのです。例えば、最近のヴィヴィデンス・リサーチ社の研究によると、整理されていない検索結果十分に考えられていない情報アーキテクチャの2つがよくある問題点として挙げられており、これが深刻なユーザービリティの問題とされているのです。

これは、私が経験したフォーチュン500社のサイトやイントラネットのユーザーインタビュー結果と共通しています。ユーザーの中には、必要な情報が広大な情報スペースから見つけることができないストレスから、泣き出しそうな人もいたくらいです。

IAサミットでユーザビリティの専門家であるスティーブ・クルーグもこの大胆は発言について賛成をしています。彼の会社のモットーもインフォメーションアーキテクトが直面している問題そのものなのです。ファインダビリティをデザインしていくとすぐに効果があがるのです。

今後ますます私たちの仕事は難しくなっていく一方です。しかし、これは良いことなのです。ビジネス戦略の権威であるマイケル・ポーター興味深い記事の一説を考えてみてください。

企業が急いで実行しようとしている一般的なパッケージ・アプリケーションの導入を中止して、これからはその企業の強みをインターネット技術に転換していけるようにオリジナル開発をしていくべきです。しかし競合他社と比べて強みとなるような結果を出すためには、非常に複雑な仕事をこなさなくてはなりません。

この最後の文章がまさに私たちがする仕事となるのです。私たちにはこれからとても重要ですが難しい仕事が待っているのです。将来は、ファインダビリティの問題が山積みです。

これからどこに向かっていくのか?

ファインダビリティという言葉とコンセプトを探るためにこの記事を書きました。皆さんがどのように解釈するのかとても興味があります。ファインダビリティは共感を得ているのか?ファインダビリティをデザインすることを面白いと思っているのか?またはファインダビリティ・スペシャリストになる準備ができているのか?この言葉にイライラさせられているのか?ファインダビリティが過大評価されているのか?または、行きたいところにたどりつけないけれど、高級でキレイな空港が多く出来ることを望んでいるのでしょうか?

Boxes and Arrowsでも面白い議論がされています。あなたの意見を聞かせてください。

NobuyaSato — 2003年06月30日 06:24